側弯症の原因と予後について〜わたしたちの背骨に、静かに起こる変化を見逃さないために〜
- Yusuke Takayama
- 7月13日
- 読了時間: 5分
□第1章 側弯症とは?
○第1節 どんな状態なのか
側弯症(読み方:そくわんしょう)は、背骨が左右に10度以上カーブしてしまう状態を指します。まっすぐな背骨が、文字通り「曲がる・ねじれる」ことで、見た目の左右差や違和感、姿勢の崩れなどが起こります。
この背骨のカーブの程度は、「コブ角(Cobb angle)」という指標で測られ、10度以上の湾曲がある場合に「側弯症」と診断されます。
○第2節 主なタイプ
側弯症には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。
・特発性側弯症:原因が特定できないタイプ。思春期の成長期に多く見られ、全体の約80%を占めます。
・器質性側弯症:神経や筋肉の病気、先天的な背骨の変形、外傷などが原因で起こるものです。
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□第2章 側弯症の原因
○第1節 思春期特発性側弯症
もっとも多く見られるのが「思春期特発性側弯症」です。このタイプは原因がはっきりしていませんが、以下のような複数の要因が関係していると考えられています。
・遺伝的な傾向:家族に側弯症の人がいる場合、発症のリスクが高まることがわかっています(Ogilvie, 2010)。
・ホルモンバランスの影響:メラトニン(睡眠ホルモン)や成長ホルモンの分泌に関連する説もあります(Machida et al., 1994)。
・体の使い方や筋力のアンバランス:左右で偏った動作(片側荷重や片手使いの多い生活)や、体幹筋の弱さなどが、姿勢の歪みを引き起こす一因になるとも言われています。
○第2節 器質性側弯症の要因
・脳性まひ、筋ジストロフィー、脊髄の病変などによって起こる「神経筋性側弯症」
・背骨の骨そのものに生まれつきの異常がある「先天性側弯症」
などは、進行性であることが多く、専門的な治療と早期発見がとても大切になります。
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□第3章 側弯症の予後とは?
○第1節 コブ角の大きさと進行のしやすさ
側弯症は、「どれくらい曲がっているか」によって対応や経過が異なります。
・10〜20度(軽度):日常生活に大きな支障はなく、定期的な経過観察や軽い運動療法で管理できる場合が多いです。
・20〜40度(中等度):進行の可能性が高まるため、装具(コルセット)療法が選択されることもあります。
・40度以上(重度):肺機能への影響や慢性痛が出ることもあり、手術を検討する場合もあります。
○第2節 年齢による違い
・成長期の子ども:骨の成長に伴い、側弯が進行しやすいため、定期的な観察や早期介入が重要です。
・大人の側弯症:加齢や筋力低下によって痛みや疲れやすさ、姿勢の崩れなどが現れやすくなります。中には腰痛や足のしびれを伴うこともあります。
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□第4章 側弯症とピラティスの関係
○第1節 ピラティスの良さとは?
「側弯症のために何か運動したいけど、何がいいのかわからない」「体に負担をかけたくない」——そんな思いをお持ちの方にこそ、ピラティスはおすすめです。
ピラティスは、もともとリハビリから生まれたエクササイズ。
・呼吸を整えながら
・身体の中心(体幹)を安定させ
・背骨や骨盤の動きをやさしく引き出していく
この一つひとつの動きが、側弯症で崩れがちな「左右バランス」や「姿勢感覚」を整える助けになります。
○第2節 研究で示されている効果
実際に、韓国の研究(Lee et al., 2022)では、ピラティスを3か月以上続けた思春期の側弯症の方々に、
・背骨の曲がり角度の改善
・姿勢の安定
・腰背部の痛みの軽減
などの効果が見られたという報告があります。
○第3節 おすすめのピラティスエクササイズ
・マーメイド:体側の柔軟性を高め、左右バランスを整えます。
・ウォッシャーウーマンツイスト:左右均等な回旋運動を通して、体幹を意識しながらねじれを修正。
・ショルダーブリッジ:骨盤の安定性と背骨の分節的な動きを促進します。
※すべてのエクササイズは、専門のインストラクターの指導のもと、安全に行うことが大切です。
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□第5章 アールアップでできること
ピラティススタジオアールアップセンター北では、側弯症や姿勢の悩みをお持ちの方に向けて、一人ひとりに合ったオーダーメイドのプログラムを提供しています。
・リハビリの国家資格を持つスタッフが、初回からしっかりと評価
・マシンを活用した安全で効果的なエクササイズ
・「整える」だけでなく「感じる・気づく」ことを大切にしたセッション
側弯症を「治す」のではなく、自分の身体を知り、整えていくプロセスを一緒に歩む。それがアールアップのピラティスです。
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□おわりに
側弯症は、すぐに命にかかわるものではありませんが、日常の姿勢や呼吸、そして心の在り方にまでじわじわと影響を与える症状です。
だからこそ、「気になるけど放っておいた」を、「今、自分のからだに向き合ってみる」に変えてみませんか?
ピラティスは、がんばるものではなく、“やさしく気づいていく”ためのツールです。
ご自身のからだと丁寧に向き合うその時間が、きっと未来の姿勢と心地よさを育ててくれるはずです。
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■参考文献
• National Library of Medicine: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
• Lee, H. et al. (2022). “Effect of Pilates on spinal deformities in adolescent idiopathic scoliosis.” J Phys Ther Sci.
• Machida M. et al. (1994). “Melatonin deficiency in adolescent idiopathic scoliosis.” J Bone Joint Surg Br.
• 日本理学療法学会誌
• 日本側彎症学会資料
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