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ピラティスの歴史 〜ピラティスはどうやって始まったのか?〜

  • 執筆者の写真: Yusuke Takayama
    Yusuke Takayama
  • 6月15日
  • 読了時間: 4分

更新日:6月19日

ピラティスは、リハビリと健康のために生まれた“身体の再教育”法です。美しい姿勢、インナーマッスル、マシンを使った洗練されたエクササイズ──そんなイメージの強いピラティスですが、その起源をたどると、一人の人物の病との闘いや、戦争のさなかに生まれたリハビリの知恵に行き着きます。

 

○ ジョセフ・ピラティスという人物

ピラティスを創始したのは、1883年にドイツで生まれたジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスという男性です。彼は幼少期、喘息やくる病、リウマチ熱といった病気を抱え、虚弱体質で学校でもからかわれる存在でした。

しかし彼は、「自分の体を鍛え直すことはできる」と信じ、体操、ヨガ、格闘技、ボディビル、呼吸法、東洋医学、解剖学など幅広い分野を独学で研究していきます。その中で彼が確信したのが、身体を意識的にコントロールすることが、健康と幸福を導くという考え方でした。

 

□ 第一次世界大戦での経験が、ピラティスの原型に

ジョセフは第一次世界大戦中、イギリスで敵国人として収容所に拘束されます。そこで彼は、ベッドに寝たきりの負傷兵たちに、自ら編み出したエクササイズを教えはじめました。ベッドのスプリングを改良して、寝たままでも安全に動ける装置を作り、それがのちに“リフォーマー”と呼ばれる器具の原型になります。

実際に彼の運動を続けていた兵士たちは、他の人よりも健康状態がよく、感染症の流行にも耐えられたと伝えられています。

 

○ アメリカでの広まりとダンサーとの関わり

戦後、ジョセフはアメリカに移住し、ニューヨークで妻クララと共にスタジオを開設します。その場所がバレエスタジオのすぐ近くだったこともあり、多くのダンサーがジョセフのメソッドをリハビリ目的で取り入れるようになります。

彼らは、ピラティスの・関節に負担をかけずに体幹を鍛えられる・左右差や姿勢の癖を整えられる・動作の質が高まるといった特徴に大きなメリットを感じ、広く支持されていきました。

この時期に活躍したのが、後に「ピラティス・エルダー」と呼ばれる直弟子たちです。中でもロマナ・クリザノウスカやロリータ・サン・ミゲルなどは、現在のクラシカル・ピラティスの継承者としても知られています。

 

□ 「コントロロジー」=身体と心のコントロール

ジョセフ・ピラティスは自身のメソッドを「ピラティス」ではなく、「コントロロジー(Contrology)」=身体と心を意識的にコントロールする術と呼んでいました。

彼の著書『Return to Life Through Contrology(1945年)』には、次のような考えが記されています。

・正しい呼吸が、体と心の健康の基礎となること・少ない回数でも、正確な動きが何よりも重要であること・姿勢の歪みや筋力のアンバランスが、身体の不調を生むこと・精神の集中と身体の統合が、人生の質を高めること

 

○ 研究で明らかになった効果

現在、ピラティスの効果は科学的にも証明されつつあります。

○ 例えば、アメリカやヨーロッパの研究では、・慢性腰痛の改善体幹の安定性の向上姿勢の改善と筋バランスの調整不安やストレスの軽減といった効果が報告されています。

特に、理学療法やリハビリテーション領域での応用は進んでおり、医療現場でもピラティスが導入されるケースが増えています。

 

□ まとめ:ピラティスは“体と心の教育”です

ピラティスの本質は、ただの運動や流行のフィットネスではありません。□ 自分の体を感じ、整え、変えていく──□ 自分を深く知るための「動きの学び」そのものです。

ジョセフ・ピラティスはこう語っています。

「10回で違いを感じ、20回で見た目が変わり、30回で新しい身体が手に入る。」

彼の言葉どおり、丁寧に続けることで、ピラティスはあなた自身を芯から変えてくれます。

 

参考文献:

・Joseph Pilates & William Miller『Return to Life Through Contrology』(1945)・Kibar S, et al. J Back Musculoskelet Rehabil(2017)・Wells C, et al. PLoS One(2014)・Cruz-Ferreira A, et al. National Library of Medicine(2011)・Lolita San Miguel, Pilates: An Interactive Workbook(2003)

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