r-UPPILATES STUDIO
← コラム一覧へ戻る

ピラティスの基礎

ピラティスで集中力は上がる?運動が脳の“覚醒状態”に与える影響を解説

高山雄介・2026-11-02・読了時間 約11分

はじめに

起きて2時間たっても、頭に霧がかかっている

  • 出勤してもなかなか仕事のスイッチが入らない
  • 午前中は調子がいいのに、昼食後に急に集中が切れる
  • 会議や資料づくりの最中に、気づくと別のことを考えている

こうした「頭の冴えなさ」を感じている方に向けた記事です。

先に結論からお伝えします。ごく軽い運動を10分ほど行っただけで、集中力に関わる脳の働き(実行機能)が一時的に高まったという実験が報告されています【参考2】。ただし、運動が認知機能に与える影響を多くの研究でまとめて見ると、その効果は平均して「小さいがプラス」にとどまります【参考1】。そしてピラティスについては、他の運動より集中力を高めると言い切れるだけの証拠は、まだありません【参考3】。

この記事では、「覚醒状態」という脳の仕組みから順に、研究で分かっていること・まだ分かっていないことを整理し、日常に取り入れる方法をお伝えします。

なお、「ピークステイト」は、心身の調子が最も良い状態を指して、スポーツやコーチングの場面で使われることのある言葉です。研究論文で一般的に使われる用語ではないため、この記事では「覚醒」と「実行機能」という言葉で説明します。

第1章 「覚醒状態」とは何か、集中力とどう関係するのか

覚醒とは、脳と体が「起きている度合い」

覚醒とは、眠気から興奮までのあいだで、脳と体がどのくらい活動しているかを表す言葉です。覚醒が低すぎると眠くてぼんやりし、高すぎると緊張して落ち着かなくなります。集中して作業するには、そのあいだのちょうどよい状態が望ましいと考えられています。

「頭が冴えない」という感覚の背景には、この覚醒の度合いが関わっていることがあります。覚醒の度合いは、睡眠、ストレス、食事のタイミングなど、運動以外の要因でも変わります。運動は、そのひとつの手段にすぎません。

集中力の正体は「実行機能」

私たちが「集中力」と呼ぶものは、研究では「実行機能」という言葉で扱われることが多くあります。たとえば次のような働きです。

  • 目の前のことに注意を向け続ける
  • 余計な情報や衝動を抑える
  • 状況に応じて、やり方や考えを切り替える
  • 頭の中に情報を一時的に保っておく

こうした働きには、おでこの奥にある「前頭前野」が深く関わっているとされています。

実行機能は「ストループ課題」で測られる

研究では、実行機能の指標として「ストループ課題」がよく使われます。たとえば「あか」という文字が青い色で書かれているとき、文字ではなく「色」を答える課題です。つい文字を読んでしまう反応を抑えなければならないため、注意力と抑制力の目安になります。

この後に紹介する研究も、この課題を使っています。

第2章 軽い運動で、頭は冴えるのか——研究で分かっていること

10分の軽い運動で、成績が上がった実験

2014年に日本の研究グループが報告した実験があります【参考2】。対象は若い成人25名で、エルゴメーター(自転車こぎの運動器具)で10分間運動する条件と、運動をしない条件を比べました。運動の強さは最大酸素摂取量の約30%で、息が切れるような運動ではなく、ごく軽い負荷です。

結果は次のとおりです。

  • 運動のあとは、ストループ課題の成績が向上した
  • 成績の向上は、気分の面で測った「覚醒度」の上昇と関連していた
  • 課題中は、前頭前野の左側などで活動が増えていた

研究者らは、運動によって覚醒が高まり、それが前頭前野の働きを支えたと考察しています。「ハードに追い込まなくても、軽く動くだけで頭が冴える可能性がある」という点は、忙しい方にとって心強い知見かもしれません。

ただし、この結果をそのまま日常に当てはめることはできません

注意したい点があります。

  • 対象は若い成人25名と少人数で、年代や体力が異なる方にも同じことが言えるかは分かりません
  • 測られたのは運動直後の成績で、冴えた状態がどれくらい続くかは、この実験からは分かりません
  • 運動の種類は自転車で、ピラティスではありません

多くの研究をまとめると、効果は「小さいが、プラス」

では、他の研究も含めて見るとどうでしょうか。2012年に発表されたメタ分析(複数の研究をまとめて分析する手法)は、一度きりの運動が認知機能に与える影響を調べた79件の研究を統合しています【参考1】。

結論は、全体として「小さなプラスの効果がある」というものでした。効果の大きさを表す値(g)は0.097で、決して大きくはありません。運動中、運動直後、少し時間がたった後のいずれのタイミングでも、同じように小さなプラスが見られました。

また、効果の出方は、運動の長さ、強さ、測る認知機能の種類、参加者の体力によって変わることも示されています。つまり、「運動すれば誰でも必ず頭が冴える」とは言えず、条件によって差があるというのが、研究全体からの正確な読み方です。

この結果を、日常でどう読めばよいか

ここまでの研究を生活に引き寄せて読むと、次のようになります。

  • 「激しく運動しなければ意味がない」とは限りません。実験では、ごく軽い運動でも成績の向上がみられました【参考2】
  • 長く座り続けたあとや大事な作業の前に、数分から10分ほど体を動かしてみる価値はあるかもしれません。ただしこれは研究結果を日常に当てはめた考え方で、この使い方そのものを検証した研究ではありません
  • 効果の出方は人や条件で違うため【参考1】、運動の種類・強さ・タイミングを試しながら、自分に合うものを見つけることが大切です

第3章 ピラティスは、覚醒状態を整えるのか

ピラティスは「頭も使う運動」と言えるか

ピラティスは、息が上がるほど激しい運動ではありません。一方で、呼吸のタイミング、骨盤や背骨の位置、動かす順序などに注意を向け続けながら行います。体を動かしながら注意を保つ運動なので、頭のスイッチが入りやすいのではないか、と考えることはできます。

ただし、これは仮説の域を出ません。ピラティスを直接調べた研究を見てみましょう。

ピラティスを調べた研究:エアロビクスと同程度の改善

身体活動の少ない若い成人52名を、ピラティス群とエアロビクス群にランダムに分け、どちらも中等度の強度で週3回・4週間行った試験があります(2022年)【参考3】。

  • ストループ課題と、言葉をどれだけ素早く思い浮かべられるかを見る「語の流暢性」課題では、両群とも前後で改善し、2群のあいだに差はなかった
  • 動作の速さを測る課題では、ピラティス群でのみ大きな改善がみられた

読み方には注意が必要です。この試験は、報告の要約を見る限り、運動をしない対照群との比較が含まれていません。そのため、改善が運動そのものによるものかは慎重に判断する必要があります。また、52名・4週間と規模も小さいものです。

整理すると

分かっていること

  • ごく軽い運動の直後に、実行機能の成績が上がったという実験がある【参考2】
  • 研究全体では、運動の効果は小さいがプラスの傾向がある【参考1】
  • ピラティスを数週間続けた若い成人で、注意や抑制の成績が改善したという報告がある【参考3】

まだ分かっていないこと

  • ピラティス1回の直後に、覚醒や集中力がどれだけ高まるか(今回調べた範囲では、これを直接調べた研究は見つけられませんでした)
  • 冴えた状態がどのくらい続くか
  • ピラティスがエアロビクスなど他の運動より優れているか

つまり、「ピラティスで覚醒状態をつくる」と言い切ることはできません。**「運動習慣のひとつとして、頭の冴えに役立つ可能性がある」**という範囲で捉えるのが適切です。

朝や仕事前にできる、ひとつの動き

椅子に浅く座り、足の裏を床につけます。息を吸いながら背骨を上へ伸ばし、息を吐きながら、おへそをのぞき込むように背中をゆっくり丸めます。息を吸いながらもとの姿勢に戻ります。これを5〜8回、呼吸に合わせてゆっくり行います。

痛みがある場合は中止してください。また、この動きで集中力が上がると証明されているわけではなく、あくまで「体を軽く動かして、呼吸と背骨に意識を向ける入口」としてご紹介するものです。ひとりで行うと「この動きで合っているのか」「続けられるのか」が分かりにくい、というのが正直なところで、そこは専門家の目が役に立ちます。

第4章 アールアップでできること

私たち「ピラティススタジオアールアップ センター北」は、横浜市都筑区のセンター北駅から徒歩3分にある、マシンピラティス専門のパーソナルスタジオです。

代表の高山雄介は作業療法士であり、PHI Pilates MasterTrainer として養成コースも担当しています。リハビリの現場で培った視点から、姿勢や呼吸、動きのクセを姿勢分析で確認し、おひとりおひとりに合わせた内容を組み立てます。リフォーマー、キャデラック、チェアーなどのマシンを使い、完全マンツーマンで進めます。負荷を調整できるので、体力に自信のない方や、運動が久しぶりの方も無理なく始められます。

初回は、お悩みや日々の過ごし方をうかがい、姿勢や呼吸のクセを確認したうえで、その日の体に合う動きを選びます。「仕事前に頭を切り替えたい」「座りっぱなしで体も頭も重い」といったご相談も、お気軽にお聞かせください。

体験レッスンは7,700円(税込)です。公式LINEにご登録のうえ、ご来店時にクーポンをご提示いただくと3,000円でご利用いただけます。営業時間は火〜金が9:00〜19:00、土・日・祝が9:00〜18:00、月曜定休です。

なお、頭が冴えない状態が長く続く、日中の強い眠気や気分の落ち込みをともなう、急に物忘れが増えた、といった場合は、運動の前にまず医療機関でご相談ください。睡眠や気分、体の病気が背景にあることがあります。

関連する記事もあわせてご覧ください。

はじめての方は、はじめての方へもご参照ください。

よくある質問

Q. ピラティスをすると、集中力は上がりますか?

上がる可能性はありますが、言い切ることはできません。ピラティスを数週間続けた若い成人で注意や抑制の成績が改善したという報告はある一方、エアロビクスと同程度で、ピラティスが特に優れているとは示されていません【参考3】。

Q. 何分くらい運動すれば、頭が冴えますか?

実験では、ごく軽い運動を10分行った例があります【参考2】。ただし、運動の長さや強さによって効果が変わることも分かっているため【参考1】、「何分やれば必ず」という目安は示せません。

Q. 朝と仕事前など、いつ行うのがよいですか?

メタ分析では、運動中、運動直後、少し時間がたった後のいずれでも小さなプラスが見られました【参考1】。時間帯による差は今回確認できていないため、ご自身の生活に取り入れやすい時間で問題ありません。

Q. 体力に自信がなくても受けられますか?

はい。マシンはスプリングの強さで負荷を細かく調整できるため、体力に合わせて始められます。体力のある・なしによっても運動の効果は変わるとされているので【参考1】、まずは今のご自身に合った強さから始めましょう。

Q. 集中できないのは、運動不足のせいでしょうか?

運動不足が関係している場合もありますが、睡眠、ストレス、気分、体の病気など、ほかの要因も考えられます。長く続く場合や、日中の強い眠気をともなう場合は、医療機関でご相談ください。


参考文献

  1. Chang YK, Labban JD, Gapin JI, Etnier JL. "The effects of acute exercise on cognitive performance: a meta-analysis." Brain Research. 2012;1453:87-101. DOI: 10.1016/j.brainres.2012.02.068
  2. Byun K, Hyodo K, Suwabe K, et al. "Positive effect of acute mild exercise on executive function via arousal-related prefrontal activations: an fNIRS study." NeuroImage. 2014;98:336-345. PMID: 24799137
  3. Kaya BK, Zengin Alpözgen A. "Comparing the Cognitive Functioning Effects of Aerobic and Pilates Exercises for Inactive Young Adults: A Randomized Controlled Trial." Perceptual and Motor Skills. 2022;129(1):134-152. DOI: 10.1177/00315125211051178

まずは体験レッスンでお体の状態を確認してみませんか?